人の未来をつくる土台は、小学生時代の日常にあります。その中でも今回は「話すこと聞くこと」についての私の実践をご紹介したいと思います。
スピーチ?論破?違います。AIと差別化できる人間味のあるトーク力を育てることを目標とした「話す力・聞く力」の育て方です。一学級担任の試行錯誤をお伝えしたいと思います。
この記事は教室での実践が中心ですが、先生だけでなく、「これから必要なコミュニケーションの力」を育てたいと考えている全ての大人の方に読んでもらえたら嬉しいです。
「聞く」と「聴く」
「聞く」という漢字は2年生で学習しますが、私は「聴」の漢字も教え、普段は「聴く」ことを意識させるようにしています。
理由は、意味と字形に関係しています。広辞苑(第七版)によると
聞く:音や声を耳で感じること。また、他人の話や説明を聞いて理解すること。質問する行為も含む。
聴く:音や声を注意深く耳で聞くこと。心を傾けて注意深く聞き入ること。また、演奏や講義を聴くこと。
と書かれています。広辞苑の説明からも分かるように、「聞く」は単に音を感じる行為を指し、情報を得ることがメインである一方、「聴く」は、より深い理解や注意深く耳を傾けることが強調されているんですね。
そして形を見てください。
話す時・聞く時に大事なポイントが全部入っていますよね。この漢字を書くだけで指導がとてもやりやすくなります。というわけで、ここからは「聴く」に統一して話を進めていきたいと思います。
話すのも聴くのも「居心地」次第
授業中の活動として「話す・聴く」を実りのあるものにするために、「そのスキルを身に付けさせていきたい」と教師だったら誰もが考えると思います。
でも、実は、スキル重視でいくとうまくいかないんですよね💦
私も各教科や学活・道徳・給食・朝の会・帰りの会…いろんな場面で「話す力聴く力」を育てたいと思って工夫してみました。でも、なんとなく目指しているものと違う…
そして、気づきました。
居心地のいい学級なら子どもは話し始めます!
一番大事なのは、間違いを恐れずに安心して話すことができる学級づくりだったんです。(^ ^)
そこからは、学級経営と教科指導をからめて一体化することを、より強く意識して指導するようになりました。優しいコミュニケーションができる学級は成績が上がることも学力テストの結果から実感することができました。
安心できる雰囲気の中で、お互いの言葉を聴き、自分の思ったことを怖がらずに話すことができると、子どもたちは「ここは自分の居場所」と感じるようです。
「人間だから、間違いも失敗もやらかしもいっぱいしちゃうよね(^◇^;)」ということをクラスの共通認識にします。すると、強めに言ってしまった言葉も、「正しい・正しくない」の基準ではなく、相手に嫌な気持ちを与えたなら「ごめんなさい」が素直にできるようになります。
間違ってないから謝らない、ではなく「相手がどう受け取ったか」を基準に話すようにしていくと、優しいコミュニケーションに繋がるんだなあと感じました。
では、実際にはどんな順番で土台作りをしていったのか図で示したいと思います。
雰囲気づくりと並行しながら、「話す人も聴く人も主役にするために、思いやりの気持ちをもって話合いに参加するのが当たり前になるように仕向けていきます。
方法は簡単です!小刻みに褒めます!
良いことはすぐ褒めます。2割り増しで褒めます。
例えば、
「今の語りかけ方、心に届いたよ。」
「笑顔で聴いてくれてるから安心して話せたね。」
「頷きながら聴いてもらえると嬉しいよね。」
「何を伝えようとしているのか聴き取ろうとしているのが伝わってきたよ。」
など、とにかく話した人のことも、聴いていた人も、全体の雰囲気も、「いいな」と思ったら、すぐ褒めます。
学習内容から離れてしまうのでは?と心配する先生もいるかもしれませんが、大丈夫です!ますますその後の話し合いがよくなっていきますよ。o(^▽^)o
語りかけと反応(餅つき・漫才)
人間味あるトーク力を育てたいと思っているので、ガチガチの話型は指導しませんが、普段の会話も含めて「語りかけること」を繰り返し伝えています。次の図を見てください。o(^▽^)o
令和の今、うすと杵を使って餅をついたことのない子も多いかもしれません。
お笑い芸人の「クールポコ」さんのネタを思い出すとイメージしやすい子どももいるかもしれません(^▽^)
返し手さんが餅をひっくり返す前に杵を振り下ろしたら、ケガをさせてしまいますよね。相手を意識して話すことができなければ会話が成立しないのと同じことです。
こういう物理的なイメージをもたせることも、お話キャッチボールに慣れさせる意味ですごく効果ありです。壊れても話し続けるスピーチロボを量産してはいけないと肝に銘じています。
中田敦彦さんのyoutubeで話し方の書籍紹介をしていた中で「餅つきのように」という表現と語尾の「〜ですよね」が出てきました。「同じだ!」って嬉しくなりました!
「なあに?」で呼応するやりとり
これは、低学年を担任している時の実践です。「前のめりで聴く集団」を育てるために、あえて区切って話すようにさせました。
ぼくは、こう考えました。
なあに?
ここに〇〇って書いてありますよね。
はい!
ここから本題に入ります。まだ、話し始めなのですが、すでに2度、聴き手が反応しなければならないシーンがありました。このことによって、まだ話に集中できていなかった子どもも聴く姿勢が整うことになります。
みんなを巻き込んで自分の話を聴いてもらう力をつけておくと、将来役に立ちそうだと思いませんか٩( ‘ω’ )و?
以前はこんな感じ
現行のひとつ前、平成20年告知の指導要領を受けて実践されてきた「従来のよくある話型」では、こういう言い方をモデルにしていました。
私は〜だと思います。なぜなら、〇〇は、▲▲だからです。
考えと合わせて、その根拠や理由まで簡潔な表現で話すことが求められていました。
整然として無駄のない話し方ですが、普段の話し言葉とはちょっと違いますよね。そのため話すことを怖がる子やじっと座って聴くだけの子どもたちが見られました。
そしてその対策として、教師は「マニュアル」を用意し、それさえ見れば誰でも話せるようにしました。でも、その結果、マニュアルを見ないと話せない子どもも増えてしまいました…(T ^ T)
当時の方向性を批判しているのではなく、私たち教師も試行錯誤して「今」に辿り着いたという事実です。その時その時の精一杯の力でベターを探ってきました。
でも、その時代によって「付けなければいけない力」は変わります。
だから、ベテランになってもこの仕事には完璧ということがありません。経験が浅くても、何十年やってきたとしても、「今の子どもを導く」という点においては一緒だからです。これは教師の本業の部分です!一緒に頑張りましょう!
これからのコミュニケーション
子どもたちが子ども同士で学び合ったり、一緒に遊んだりする中で必ず必要になるのが「よいコミュニケーション」です。
人とどう関わって自分をつくっていくのか、小学生時代の自己形成のカギはコミュニケーションにあるということです。
学校では、教科や学校生活全般において「話す力・聴く力」の育てていきますが、パパママや子どもと関わる全ての大人が「これからのコミュニケーション」を意識することで、もっと気持ちの伝わる、優しいコミュニケーションができると思います。だから、ノウハウをシェアして大人みんなで子どもを育てていきましょう!
語尾の「ですよね」や「あ・は行」反応、餅つきand漫才パターン、「なあに?」など、この記事では、私が実際に取り組んできた「話す・聴く」についてご紹介してきました。
どれも子どもたちの変容を感じることができた実践です。ぜひ、取り組めそうなものがあったらやってみてください。
私が30年やってきて掴んだ手応えも、これはダメだった💦ということも方法としてシェアしていきたいと思います。ぜひまた覗いてみてくださいね!
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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